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電子楽器、音楽、コンピュータ、プログラミング、雑感。面倒くさいオヤジの独り言

住宅の性能評価

この週末は、ハウスメーカー3社と打ち合わせをする中で、”まともな家”とはどんなものなのかを勉強させていただいた。
先週書いたエントリー”ブランド vs ローコスト”で「見せてもらおうか、性能の違いやらを」と雄たけびをあげ、勢い余ってこう書いた。

500万の違いは、工法の違いだの、耐震性能の違いだの、断熱性能だのの違いを吹き飛ばすに充分なパワーを秘めている。
だって、実際に(今現在想定されているような)東海大地震が起きたときに、命が助かることを保証してくれる代物でもないし、建て替えコストが大幅に少なくなることを保証してくれるわけでもない、断熱性能の違いで、この差額を打ち消すだけの省エネ効果があるとは思えない。デザイナーの渾身のデザイン?一級建築士とか丁寧な技術者のヒアリング?営業担当者の気の利いたフォロー?
何の差額なんだろう。
ローコスト系メーカーが売っているのは、安心な住宅ではないとしたら、何だと言うんだろう?

まさにこの部分を、”ブランド”の視点から見つめてみたということ。
結論を先に言えば、
500万円の差額を埋め合わせるだけの価値があるかどうかの評価を別として、
「快適な家を提供する際の確固たる技術や、評価方法が存在する」ということ
その際の視点とは、メーカーの総合パンフレットや設備紹介ではなく、テクノロジー紹介にきちんと書いてあること。(テクノロジー紹介がきちんと書かれていないハウスメーカーを同じ評価の土俵に乗せてはいけないこと)
その評価ポイントは、営業担当の口車とは無関係に、物理的な数字として客観的に存在すること。
評価ポイントとは
・耐震性
・気密性
・断熱性
・遮音性
・換気性能
・・・などなどと呼ばれ、各メーカがしのぎを削っている。ラボで実物大のモデルを使って検証したり、寒冷地のモデルハウスでデータを取り続けていたり、ユーザ宅の統計を生真面目に収集、分析したり。
そう、大好きな工学の世界。エンジニアリングの世界なのである。
誰がどう言おうと揺るぎの無い、真実の世界。エンジニアリング。
うーん、また妄想ワールドが炸裂しそうな予感がするが、できるだけ冷静に、住宅性能とやらについて書いてみる。

■耐震性

どこのメーカーも「地震に強い」と表現する。阪神淡路大震災の事例を引き合いに出す。
全壊、半壊はありませんでした・・と。
しかし、あった、なかったという表現だけではまだ不十分だ。
役所が調査した数量把握のための数字だけではなく、全壊、半壊ではなかったにしても、通常の暮らしに戻すために、どれだけの費用を要したか。
建物がどうこうではなく、人はどうなったのか。家具にはさまれていないか、火事で焼けていないか。
こういった疑問に対して、工法がどうので答えられるものではない。
もっとも心動かされる営業トーク
「ユーザ2万棟で、全壊、半壊はゼロです」
「中の人は守られます」「地震の時には、家の中にいてください(外に出ないでください)」
「他工法で全壊、半壊した修繕費は1100万円、自社の場合は350万円でした」

あぁ、素晴らしい。「地震の時には、当社の建てた家の中にいてください」なんて心強い。


■気密性

C値(平方メートルあたり、何センチ平方の隙間があるかを表す)の小ささで、空間の密閉度を表す。
冷暖房の効き、換気性能、断熱性能、遮音性に大きく関係する(らしい)。
「なんか、スースーするね。」
「日本の木の家って、こうやって呼吸してるんだね、父さん」
なんていうのは、気密性の話だ。
(自分で言いながらも)何が父さんだか知らないが、木が呼吸して湿気を調整する機能と、大工の腕が悪くて、隙間が開いているのは別の問題だから注意したい。w


■断熱性

Q値と言う熱損失を表す数値で表される。小さいほど性能が高い。2.3とか2とか。
日本を5つのエリアに分け、それぞれに必要とされるQ値が異なる。北海道、東北を表す?、?では、高い断熱性能が求められる。中部地方は?。
Q値が分かっていれば、部屋の大きさと開口部の大きさで、大体(冷暖房にかかる)電気料金の違いを計算できるらしい。大体千円単位で綺麗にデータが現れるらしい。
これは名前を出して讃えたいのだが
一条工務店”夢の家”というシリーズの断熱性は半端ない。1.16とか
この1.16って言うQ値は、気密性、断熱性をアピールする他社が足元にも及ばない。
冷暖房費に直接響いてくる数値なだけに、30年過ごした場合のランニングコストの違いは凄い。
一条のデータを用いれば、次世代省エネ住宅レベルとの比較で、45坪の家で、年間8万円のコストの違いがあって、30年間ならば240万円、ランニングコストが違ってくるという話。

あぁ、「見せてもらおうか、性能の違いとやらを」と言っていた1週間前の自分が恥ずかしい。


■遮音性

デシベルの音をカットできるか。これも重要な要件。外から来る音を壁と窓で遮音する。床を伝う内部の音(振動)を遮音する。L-○○dBとかD-△△dBとか
これも体感してきた。
電子ドラムを部屋の中で叩く場合、バスドラムのペダルをキックするのだが、モデルルームでツーバス足踏みを想定して、バタバタやってみた。防音をアピールする木質パネルメーカーの場合、全く聞こえないほど素晴らしい。
マンションなど、他者が上下で暮らす前提の防音レベルらしい。
また、ハウジングセンターが県道に面していて物凄く車の音がする、すぐ隣に立っている一条工務店の家。サッシを閉めると、さっきまでうるさかった車の音が、ぴたりと聞こえなくなる(気にならないレベルの音になる)

安い家を買って、毎日騒音や振動にイライラするのはごめんだもんな。
これも体感してみて分かる「性能の違いとやら」だ


■換気性能

気密性が高いと換気が気になる。換気を必要とするのは、人と構造材。
外壁と断熱材の間の結露をなくし、どれだけシロアリ、カビの発生を防げるか。
人に対しては、どれだけクリーンな空気を供給できるか。
ハウスダストの発生を抑え、アレルギー、アトピーにかかり難い家。
換気も強制的に空気だけを入れ替えるのではダメで、温度差によって断熱効率が落ちないように・・とか、湿気まで持ち込んでもらっては困るとか、外から花粉を持ち込まれては困る・・ということで
フィルタの性能や熱交換型換気システムとか。あ、これも一条工務店の技術だね。
べた褒めだね。


■その他

ヒートショックを和らげるために全館床暖房とか
構造材(木)の防蟻処理とか
実験用のシロアリを飼って、防蟻処理の検証に余念が無いのが一条さん。そういうとこ素敵。


一条工務店

最初、HPを見たときは、「薀蓄が多くてちょっとうざいな」「もっと分かりやすくアピールしてよ」くらいに思っていたのだが、一気にファンに。
これって、理系人間に感じる第一印象と同じ。
説明っぽくてうざい。けどよくよく聞いてみると正論。
今は、言うことすべてにきちんとした裏づけがあって、正しくて、誠実で、愚直でっていうところで好感を持っている。

一条工務店に限らず、エンジニアリングな生真面目さとか、厳格さが好きだ。間違っても、設備を奥様方に分かりやすく猛烈アピールする反面、基本性能の説明が省かれてるとか、言いたくないことは見事な表現で回避する※とか、安さで人の命を担保に取るような住宅メーカー(もはやメーカーを呼んではいけない、住宅販売と呼んだ方が良いかも知れないのだ)は、一度疑って掛かるべきだ。

※例えば、耐震性をうたっておきながら、ジョイント金具や木の太さに話をスライドして、実例を示さないなどのはぐらかしや、住宅の性能によって人命と守ったり家具破損の防ぐことを保証するところ、全壊したら補償が出るよとごまかしたり。それって地震保険の考え方じゃん!とか全壊なんてほとんどありえないじゃんとか突っ込みどころ満載。

「彼らが売っているのは住宅ではなくて、商品だ」と、某木質パネルメーカが表現した時の嫌悪感。
きちんとした情報を持ち合わせていれば、むしろ同感できる。
「住宅は、設備がどうこうとか、価格がどうこうとかいう表層的な部分ではない」
それは後で何とでも選択できるが、家を作るとは、人の生命を守ること、生活を支えることだ
っていうのが、確固たる技術開発や研究、実証によって裏付けられるかどうか。
これって、一言で表現できないし、即断できる内容じゃないよなって思う。
きちんとテクノロジー紹介パンフレットに目を通して、ひとつひとつの項目を理解して、具体的に将来掛かるコストを検討するとようやく理解できること。

このことをとっても体感したし、勉強できたこの週末なのであった。
・・・ということで、今後は、ローコスト系といわれるメーカーに対して、上記の評価軸で切り込んでみる。