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ユダヤ陰謀説の正体/松浦寛

益々拍車のかかる”ユダヤ陰謀説”の危うさを論じた本。
目次に出てくるキーワードを眺めているだけでも、そのいかがわしさがぷんぷんする。
マルコポーロ事件、シオン同盟、アンネの日記への中傷、日ユ同祖論、排外的ナショナリズムファンダメンタリズム、ネオナチ、テロリズムと連動する人種主義、竹内文書、UFO、グローバルなナショナリズム、集団不安
なんだ、「○研の雑誌”△ー”」の匂いじゃないか(笑)
この本の結論を一言で言うと「ユダヤ陰謀説は集団不安を背景とした”妄想”である」とでもなろうか。

しかし、「ユダヤ陰謀説が無い」と言い切ってしまうことも、また妄想(信仰)の世界の言説である。
無いことを証明するというのは非常に難しい。

実際には、もっと難しい問題を扱っていて「事実とは何ですか?解釈があるだけではないですか?」といった姿勢(”脱構築”とかいうキーワードでかなりのページ説明されている)をどのように否定しきれるのかという問題。
古くからの哲学の問題、「外的世界と内的世界のどちらが真実か?」とか「認識の問題(リンゴが赤いという普遍の属性を持っているのか、人間の脳が赤いと感じているだけなのか)なんていう問題とも繋がっている気がする。
妄想っていうのは、自分の脳内で形成されている”内部モデル”を重視し、外部世界からのフィードバックによって修正されることの無い”脳の癖”だし、歴史修正主義者というのは、”歴史とは解釈である”→”だから、時代によって過去が変わって当たり前”となる。

ユダヤ人がガス室で大量に虐殺されたのがあったのか無かったのか?と問われれば、自分の知識と感覚では「あったと思う」
でも、その解釈の方法はいくらでもあるし、どのように位置づけるかは歴史の見方で変わるものだと思う。
だからっていって「ジェノサイドはなかった!」と言ってしまうマルコポーロの主張はおかしい。