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原価と利益と売価の話

経営者が好むたとえ話で
「売価=原価+利益ではなく、利益=売価−原価だ」というのがある。
算数が分かる賢い小学生なら誰でも分かることだが、上記の二つはまったく同じ意味だ。
しかし、立派に成人した大人が上記の式の等価性に気づいていないわけがない
正しくは
売価A=原価A+利益A
利益B=売価B-原価B
と書くべきであって、売価Aと売価Bは別のものなのだ。そして、A>Bなのである。
売価Aは、メーカー主導で、必要な原価Aに対して、経営上必須な金額である利益Aを上乗せする
利益Bは、売価Bが決まっている場合に、原価Bを下げないと出ないという、すずめの涙ほどの痛々しい差益を意味する。
「メーカー(提供者)が価格を決めるのではない。顧客が値段を決めるのだ」と勇ましい。
本当かね?顧客が適切な値段を決めるって
値切ればいくらにでもなるってことかね?
ずいぶん能天気な経済学だね・・と呆れるというか、関心するよ。
自分が首を切られても(人件費圧縮のため)顧客に自社が売る商品を提供する馬鹿がいるのかね?
先の式は、「厳密な経営の数字の話ではなく、コスト圧縮への心構えを述べたまでだ」としても、それじゃあ論理の権化である計算式を例えに出して、まやかしの詐術を使うなよと。

多分、考えるだけでもおぞましいが
売値:受注額と原価が折り合わないまま案件が発生し、それでもとらなければ干上がってしまう
利益:一応社員もパートも雇用しなければいけないから
原価:原価の圧縮しか方法がない
・・・という論理で、原価を圧縮しさえすれば、利益が出るってことなんだろう。
それにしても、ほんとか?
原価のほとんどが人件費である仕事の場合はどうなる?利益を出すため、売り上げに合わせて会社を運営するために、原価を、もっとも原価の中で大きい人件費を削減する、安い中国などの人件費に頼る
そう、会社存続の必要条件である利益を出すために、重要な原資である社員の仕事を外に出したり、文字通り路頭に迷わせたりするわけである。何のために利益を出すのか

やっぱり、会社の計算は、売価=原価+利益じゃなきゃ回らないではないか?
顧客向けに(値切りの幅を大きく設定しておいて)「利益=売価-原価なんですよ」って顧客側についてるような嘘を言うのは勝手だけどさぁ、社内では嘘はやめようよ。
原価を下げることを追求するなら、もっとリアルな計算式なり計画を立てるべきですな・・・と思っちゃう。