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電子楽器、音楽、コンピュータ、プログラミング、雑感。面倒くさいオヤジの独り言

洗脳原論/苫米地英人

あなたの「リアル」、大丈夫ですか?
などと、”能天気な日常”に呪いをかけるような不気味な問いかけ。
中国共産党が開発した共産主義教育”洗脳”。日本ではマインドコントロールなどと呼ばれ、ライトな精神論みたいに論じられているが、本来は脳を洗ってしまう=神経、肉体機能にまで影響する恐ろしい技術なのである。
筆者はオウム信者の脱洗脳に5年関わり、認知科学脳科学、コンピュータに精通した人のようだ。
脳を機械的に解明しようとする科学的な思考方法や、カウンターカルチャー、カルトに精通した筆者のスタンスはとても面白い。シュタイナーとかトランスパーソナリティなどと宗教や神秘主義に結び付けてしまいがちなネタを、脳の機能とか社会面から解きほぐしつつ、警告を発するという本書は間違いなく面白い。

コマーシャルやTVの演出で洗脳的なテクニックを駆使していたり、今では会社経営や社員教育にも洗脳が用いられる時代だ。これは気づかれないように行われるから怖い。
現代の洗脳ははるかに洗練されており、昔のCIA、KGB,中国共産党のような残酷な肉体的虐待や精神的苦痛を与える手法ではないと言われている。現実逃避の傾向を利用し、どこかに涅槃があるかのような錯覚を喧伝し、薬物で精神をコントロールしたように見せかけ、絶対帰依へと誘導していく現代のカルト。薬物を使わないものの、会社という現代のサラリーマンにとっての拘束を利用し、自己啓発の名目で行われる洗脳。
残念ながら、自分も被洗脳の経験がある。会社で行われた若手マネージャー教育の場で、自己啓発のセッションがあり、この中で洗脳手法が行われた。私はセッションの休憩が挟まれる度に、タバコの煙を揺らして、いつもの行動を行うことで平静を取り戻すよう意識し、帰宅後はさっきまで行われた洗脳手法をインターネットで調査した。頭がぼーーっと同じことを考え出し(思考停止)、ひとつのメッセージ「あなたの不幸はあなた自身の過去の行動にすべての原因がある」に絡みとられそうになる経験は、本当に怖かった。脳の真ん中にブラックホールができ、すべての思考がそこに吸い取られてしまうような、邪悪な感覚。体温調整が効かないような、寒くも熱くもない感じ。助けを求めるように上司、知人などにメールを書きまくった。
同僚達は何も不信感を感じない、経営者は研修で行われている内容にノーチェック・・・自分だけが妄想狂なのではないかという混乱。
あの経験は”確かに洗脳が身近に存在すること”をまざまざと見せつけ、その時の嫌悪は自分の中にずっと残り続けている。
ソフトなファシズムである”洗脳”から逃れること。自衛するために何を知るべきか?
他人の意思にコントロールされず、自分のリアルを保持し続けること。
相変わらず垂れ流されるTVのメッセージの裏を類推しつつ、常にそんなことを考えている私なのである。