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電子楽器、音楽、コンピュータ、プログラミング、雑感。面倒くさいオヤジの独り言

ウェブ進化論/梅田望夫

本当の大変化はこれから始まる・・・とある。
内容は、ほぼ”グーグルについての賞賛”が占めている。
キーワードを挙げるとすれば、グーグル、チープ革命オープンソースロングテールWeb2.0、アマゾン、ウィキペディア、ブログ、グーグルアース、グーグルマップス・・という感じ。
なんだか新興宗教というか、コンサルタントにありがちな怪しい夢物語、楽天主義を感じないでもないが、書かれている内容はすべて知っている話。
グーグルアースが各国の軍事関係者を驚かせた・・とか、チリも積もれば山となる・・的な利益の出し方(ロングテールなんていう言葉を使ってはいるが、そういうこと)とか、WebサービスAPIの可能性とか。
あちらがわ(ネット、ホスティングor仮想現実の世界)、こちらがわ(デスクトップコンピュータorリアル経済)っていう言い方で、あちらがわで起こっていることは、こちらがわの世界を凌駕すると鼻息が荒い。

確かにアマゾンもグーグルも莫大な利益を出して、実際に成功している。
しかし、だからといって、あちらの世界の代表でもあるグーグルが、マイクロソフトソニートヨタを無効化するとは言えないでしょ!と突っ込みを入れたくなるのである。
グーグル社員の話として「グーグルは世界政府があったとして、その世界政府のトップが欲しがるようなソフトウェアを生み出す」らしい。全世界のWebサーバのインデックスを集積して、お互いのリンクを解析したり、グーグルアース、グーグルマップのことを思い起こせば、その方向性は分かろうというものだ。
世界政府だって?おこがましいこと甚だしい。
ネットに載らない情報、ネットに載らない人達が地球の殆どを占めているのに。
世界地図にピンを刺して、地政学的な満足感に浸る独裁者、軍人みたいな感覚なのね・・・子供じみた(笑)。
人類の叡智がWebサーバに蓄積されていれば、グーグルの検索サービスが全能の神になるんだろうけど、残念ながらそうじゃない。イントラネットやデスクトップコンピュータやネットに繋がっていない大量のコンピュータにも大事な情報が眠っている。
自分は検索ならグーグルだし、グーグルマップ、グーグルアースの凄さに感嘆した一人なのであるが、どうもグーグルについて”本当の民主主義だ”だの"知の世界を再構成する”だのブログを”総表現社会”だのマスコラボレーションだのという言説を「そうですか」とは聞けないな。
実際にグーグルのAPIを使って、自分がやりたいことを実現する開発者の言葉なら聴くぞ。(笑)
グーグルがロビー活動を開始したとかいう話もあるが、実際にグーグルが作っているのは優れたソフトウェアやサービスのためであって、政治(世界政府)や革命でもないし、ましてや脱エスタブリッシュメントなんていう左翼運動でもなんでもないのである。(多分)

図らずもこの本でグーグル社員の言葉を筆者が紹介しているように「口だけのヤツではダメだ。実際に動くものを作り、その良さを回りに認めさせるヤツだけがグーグルでやっていける」のそのままなのである。
ありもしない夢想に没頭する楽しさを分からんわけでもないが、リアル社会との接点を意識したり、「自分が今していることを離れてはいけない」と思ってしまう常識人なのである、私は。
いやぁ、それにしても40万そこそこで、検索アプライアンスを出してしまうグーグルってすげぇな(笑)