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電子楽器、音楽、コンピュータ、プログラミング、雑感。面倒くさいオヤジの独り言

反定義/辺見庸・坂本龍一

911以降の世界を案じた対談本。
両者とも左翼運動→ポストモダンを経由したれっきとしたサヨク
911は、世界の非対称を鮮やかに思い出させた哲学的、思想的な事件であると論じ、南北問題、帝国主義の時代に退行しているとする。
ソ連崩壊後のスーパーパワー”アメリカ”の独断、国際ルール無視を、どの国も、どの思想も、どの哲学も止められなかった原因を探ろうとしているっぽい。ただ、議論のスタートから終わりまで同じことの繰り返しで何ら回答は出てこない。坂本龍一の視点は、”神話の世界から学ぶことが大事。世界の南から資源を強奪し、贅沢な生活をする北側ではいけない。自給自足を肝に銘じ、国家でなく個人として人生を構える”というような(ロマンチックな)アナーキストぶり。辺見庸はひたすら反国家のサヨク体質を披露。ソ連が良かったとは言えないが、世界の二極構造が安定に寄与していたと控えめに賛美。アメリカ的なるもの、キリスト教的欺瞞に対する、ビンラディンイスラムのカウンターパンチに期待を寄せているっぽい。
ただし、この二人のスタンスはふわふわしている。日本国(国家)を否定し、キリスト教を否定し、アメリカを、民主主義を否定し、マルクスも良くないと否定。期待する先がイスラムNGO、インターネット・・・ではいかにも思想のデッドエンドではないか。

結局、読後は何もはっきりしないし、ヒントを与えられることもない、単なるインテリ(っぽく色々な引用がなされた)雑談。吉本隆明坂本龍一が対談した”音楽機械論”でも良く分からない対談だったし、議論そのものが好きなんだね、この人。どこいっちゃうんでしょう?
YMOファンとしてとっても心配です。
そういえば、小林よしのり西部邁などラジカルな保守も反米を作法としているし(笑)、大好きな呉智英は封建主義者(反米というよりも非米?)。スーパーパワーを前に自分の立ち位置を探してる状況って、黒船とか明治維新みたいな感じ?宗教も黙ってるし、経済も振るわないし・・。この閉塞感を超えるための手段が宮崎アニメ的な神話か?(笑)