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電子楽器、音楽、コンピュータ、プログラミング、雑感。面倒くさいオヤジの独り言

DVD : 僕を葬(おく)る

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余命3ヶ月
「孤独に死んでゆくはずだった主人公が残すものは?」ってのが表向きのテーマ。
実際には、”自然の掟”を二重の意味で問いかけている映画。
ひとつめの自然の掟は、医学が提供する延命への問いかけ。
ふたつめは、子孫を残すことに直結しない恋愛”ゲイ”への問いかけ。
監督自身がゲイであり、私小説的な告白だとの指摘もある。

ラストシーンの崇高さには胸を打つ。
ゲイ、代理のSEXなど普通の感覚からは外れた人生。主人公が選ぶ死。肉親にさえも自らの死を共有しない圧倒的な孤独を控えめな音楽、淡々とした描き方で約75分。
ファインダーから覗き込んだ、最後の美しい写真がどこかで使われるものと想像したのだが、甘かった。
そんな過剰な演出も無し。
日常の中に、美しいものを見つけ出す感覚が試されているのかもしれない。
見たかったもの、食べたかったもの、話したかった人、遣り残したことがたくさんあって、でも、できることは本当に限られていて、そんなこととは一切関係がなく、時間だけが容赦なく過ぎていく。
ジ・エンド・オブ・ザ・ワールドが近かったと思うが、こういう感触の映画はとっても好き。
情け容赦ない運命に対峙する様を淡々と描いてて、人間の崇高さがリアルに感じられる。
ここに書かれている映画評が名文。