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電子楽器、音楽、コンピュータ、プログラミング、雑感。面倒くさいオヤジの独り言

マツダはなぜ、よみがえったのか?/宮本喜一 日経BP社

副題に、”ものづくり企業がブランドを再生するとき”とある。
バブル前夜、販売チャンネルを5と”トヨタ並み”に拡大し、RX7が商業的に失敗し、主力ラインナップなきまま、赤字決算の連続。フォードの資本比率を高め、マツダブランドの存続が危ぶまれてから、スポーツのイメージで車種を一新、世界品質でニューマツダブランドの先鞭を切ったアテンザ、よりパワーアップした(環境問題、燃費問題もクリアした)ロータリーエンジンのスポーツカーRX8に至る復活物語。
経営の厳しい要求と、卓越したエンジニアリング魂の衝突と、両者共に持ち合わせたロータリーエンジンへの愛情の化学反応。筆者は、マツダに足りなかったのは、卓越した技術をきちんと言葉で表現する”モノ語り”の力だったと結論付ける。

文字で読む開発者の熱い思い、経営者の切実な思い・・はカタログや試乗だけでは決して見えない”モノ語り”を雄弁に語ってくれる。ゴーン氏にフォーカスした日産V字復活に関する神話や、マークXの開発物語ではなく、”マツダロータリーエンジン””中島飛行機とスバル”というようなエンジニアの熱い気持ち(思想、思い込み、夢)が伝わるような物語が非常に面白いと感じる今日この頃。
ZOOM-ZOOM、スポーツ、思い通りに”曲がる””止まる”基本性能の復権など、復活後のマツダはブランドイメージを統一し、若々しい車、乗って楽しい車というコンセプトを、マーケティングと車の開発の両面で上手く表現できている気がする。
自動車業界全体が、世界で動いている様や今後を占う新技術の話題に触れられているのも収穫だった。アテンザの車台、エンジンは今後フォード系列の様々な車種で流用される。マスタングなどは、アテンザの米国現地生産のための工場で作られるらしい。RX8のロータリーエンジンを水素で動くようにしたものが、今後のクリーンなエンジン開発に期待されている・・とか。
世界に無いものを生み出そうとするエンジニアってやっぱりかっこいい。プロジェクトX的なツボだね。オヤジですわ(汗)

アテンザの納車まであと約1週間。エンジンの音を車全体で吸収する。路面状態が手に取るように分かる、機敏に曲がる、即座に止まる・・・馬力だけでは分からない”走る喜び”を早く感じてみたい。225ps、3000ccのGTOとは全く違った、”マツダ的スポーツ”の解釈が楽しみでしょうがない。その時自分は「ZOOM,ZOOM(ぶーーんぶーーん)」と子供のように喜びを表現するのだろうか?